暴力団の事務所に連れてこられた日の夜、そこにいた20人くらいの組員の方全員に抱かれました。
「これが最期だから、せいぜい楽しみな」という人がいましたが、意味が分かりませんでした。
翌日、組員の方がぐったりしたわたしを裸にして立たせ、柱に縛り付けました。
そして部屋には組員の方全員が集まりました。
組長さんが、まだ十代の若い組員数人を呼びつけ、匕首と日本刀を持ってくるよう命じました。その隣で副組長がわたしの体を見ながら「もったいない、もったいない」と言っていました。
若い組員が刃物を持って集まると、組長さんが言いました。
「お前たちはヤクザの出入りの経験がない。人を刺したこともない。本番で血糊や腹わたを見ておどおどしてちゃ、役に立たねえ。この姐さんに試し台になってもらって、せいぜい慣れておくんだ。まさか、昨夜さんざん抱いたからって、情が移っちゃいまいな」
その言葉で、わたしがこれからどうなるのか初めて理解できました。
わたしは家に一人残してきたシンイチのことが気がかりで、組長さんにお願いすると、シンイチは成人するまでちゃんと生活の面倒をみてやるから心配するなと言ってくれました。
「さっさと、はじめねえかい」
と、組長さんに言われ、若い組員の二人がわたしの前に立ちました。ふたりとも、昨夜わたしを抱いた方で、一人は、わたしが故郷のお姉さんに似てると言って、ほかの組員さんのように乱暴にせず、やさしく抱いてくれた人でした。二人とも、わたしの目を見ないようにし、刃物を持つ手が震えているように見えました。
親分さんは、業を煮やしたように、
「情けねえな、おめえらは。テツ、おまえは乳房だ。ミノル、おまえは下腹をやれ。そうすりゃあ、おめえらが必死でむしゃぶりついてたところが、ただの肉の塊だってことが分かるってもんだ」
とさせかしました。
それでも若い二人は下を向いたままなので、わたしが「うん。わたしは、もういいのよ」と言ってあげました。
二人は、決心したように顔をあげ、刃物を持ってわたしに向かってきました。
すぐに胸とお腹に、氷のような冷たさと火のような熱さが同時に伝わり、そして二人の目に涙が光っているのだけが分かりました。